それは3ミックス(3Mix)法といって、ある意味ではこれまでの歯科医療の常識をくつがえす治療法です。
虫歯の治療は基本的に、「削る」「詰める」「抜く」といった、いわば外科的な処置が中心になります。ところが、この3ミックス法は抗菌薬(抗生物質)によって虫歯の最近を退治する内科的な治療法です。C3の段階(後期の虫歯)でも、神経を残したまま痛みを止めることができます。これは、虫歯におかされた象牙質を削って掻きだし、その穴に3種類の抗生物質を詰めて炎症を抑える方法です。
虫歯は口の中のミュータンス菌などの最近(口腔常在菌)が、食べかすなどから酸をつくって、その酸が歯を溶かすことによってできます。この細菌をやっつけてしまえば、虫歯の進行を抑えることができます。歯にも自然治癒力(自己を修復する力)が備わっていますから、いったん虫歯の進行をストップしてしまえば、やがて元の歯に修復されるはずです。これが、3ミックス法の基本的な考え方です。その方法は次のようなものです。
まず、虫歯の部分に3種類の抗菌薬を塗り、樹脂などでフタをします。このとき、虫歯でどろどろに溶けてしまった部分は取り除きますが、それ以外に歯を削ることはありません。薬剤が浸透すると、象牙質や歯髄(神経)にまで入り込んでしまった菌も殺します。その後、菌の自己回復力でカルシウムが沈着し、約一年後には象牙質の部分が元の状態に戻ります。
3ミックス法なら、これまでは神経を取るしか方法がなかった虫歯でも、神経を残せる可能性があります。なお、この治療法は、本来は内服薬である抗生物質を外用薬として使うので、保険適用にはなりません。