訪問歯科診療を行っている歯科医もいます。近年、お年寄りの歯の健康がその方の生活の質を大きく作用することが認識されるようになりました。「噛む能力」は、ボケ防止にも重要な意味を持っています。口の中の細菌が肺炎の原因になることも指摘されています。
訪問歯科診療では、虫歯や歯周病の治療や入れ歯への対応などの歯科治療はもちろん行いますが、それ以上に大切な役割は、口から食べられるようにサポートすることです。入れ歯が合わない、嚥下障害があるなど、食べられない原因を突き止めて、口腔ケアやリハビリなどによってこれを改善していくわけです。
訪問診療を行う歯科医はまだまだ絶対的に足りません。歯科ユニットを搭載した歯科往診車を持っている歯科医院や歯科医師会などもあります。しかし、残念ながら2002年の健康保険法の改正で、診療報酬が引き下げられ、受診条件が厳しくなったため、訪問歯科診療は多少後退してしまいました。おかしな話ですが、往診に行って家の中で診療するのは認められるけれども、患者さんを往診車に乗せて診療するのはいけないということになったのです。
そんな状況の中で、往診の必要性を強く痛感している一部の歯科医師たちが、ある意味では採算性を度外視して各地で訪問歯科診療に取り組んでいます。