人工歯の素材としては大きく分けて、セラミックス(ガラス質の陶材)か金属のいずれかになります。代表的なかぶせ物の種類を紹介します。

 

●メタルボンド

金属のかぶせ物にセラミックスを焼き付けた人工歯で、セラミックスクラウンともいいます。金属をあまり見えないようにする方法もあります。

メリットは、前歯でも奥歯でも強度のある白い歯にできること、制度が高く適合性がよいこと、プラークがつきにくいことなどです。

デメリットは、保険の歯に比べて少し削る量が多いこと、金属を使うため歯肉が黒っぽくなる場合もあること、製作工程が複雑なために誤差が出やすいことなどです。(自費)

 

●オールセラミックス

メタルボンドが金属を使うセラミックスであるのに対して、オールセラミックスはまったく金属が見えない陶材のクラウンです。

メリットは、なんといっても天然歯のエナメル質と同じように光が透過するので、透明感のある自然な歯が再現できることで、ここがメタルボンドと最も違うところです。

体にやさしいセラミックスとゴールドを使うので、金属アレルギーのある人でも安心して使えます。ただし、とても硬い性質があるのですが、衝撃にはもろいので、強度が求められる奥歯や長いブリッジなどには向きません。(自費)

 

●インセラム

ドイツのビタ社が作っている、金属を全く使わないオールセラミックスシステムの一つで、色調の再現性に優れており、天然の歯と同じように、光を反射する作用があり、透明感をもっています。光が当たると、歯の裏側や付け根の部分が白く透き通って見えるのが大きな特徴です。

 

強度も強く、前歯の三本ブリッジまで作ることができます。セラミックスのすき間にガラスを使うという製作方法によって、優れた曲げ強さを実現しています。メタルフリーなので金属アレルギーの方も問題なく使えます。(自費)

 

●ハイブリッドセラミックス

セラミックスの利点(美しさ)を生かし、欠点(もろく割れやすい)を補うために新しく開発された材料が、ハイブリッドセラミックスです。内側が金属、外側がセラミックス90%と、保険適用の材料である硬質レジン(プラスチック)10%の混合物からできています。

素材はセラミックスに比べて軟らかく、天然歯のエナメル質とほぼ同じくらいです。そのため、かみ合わせの反対側の歯を傷つけません。奥歯のように噛む力が強くかかる部分にも十分使用できます。

 

プラスチックに比べれば変色しにくいものの、セラミックスにはかないません。すり減りづらさでも、セラミックスのほうに軍配が上がります。製作が容易なためセラミックスより安価です。(自費)

 

●ゴールド

ゴールド(金合金)素材の人工歯は、硬すぎず軟らかすぎず、本物の歯に近い強度をもっているので、かみ合う歯を最も傷めません。治療内容によってゴールドの含まれる割合を調整することができます。

 

シルバー(銀合金)に比べると、加工がしやすく歯にぴったりとおさまるように作ることができます。そのため、詰め物やかぶせ物と歯のすき間から新しい虫歯ができにくいといわれています。化学的にも安定しており、金属アレルギーは起こりにくく、シルバーのように腐食もありません。

 

金色が気になる場合は、わずかな量のプラチナ(白金)を配合したシルバーに近いゴールドにすることも可能です。(自費)